今月の読書のテーマは「水俣病について知ろう」です。
「水俣病のことなら知っています。日本の高度経済成長期に起こった、四大公害病のひとつでしょう。工場の排水で海と魚介類が汚染されて、それを食べた動物や人間が病気になったのですよね」
確かにその通りです。ですが、それだけでしょうか。
私たちは水俣病のことを、知ったつもりになっていないでしょうか?
水俣病とは…
身体のどこが侵され、どのような症状が出る病気なのか?
なぜ患者は増え続けたのか?
原因を突き止めた人たちは、なぜそれを公にできなかったのか?
なぜ情報は隠蔽されたのか?
会社は、なぜ工場の排水を止めなかったのか?
事後の救済よりも、“重要”なこととは何か?
なぜ今も、裁判が続いているのか?
被害者でありながら「水俣病は『のさり(天からの授かりもの)』」と語る人の心情とは?
水俣病を知ろうとするとすぐに、問題は病気だけではないことに気づきます。国と社会、私たちの生き方・在り方を問うことになるのです。
歴史を振り返り、「こうしていればよかったのに」と言うのは易しいことです。
しかし今私たちは、自分たちの生き方が見えていると言えるでしょうか。2024年5月、水俣病の患者団体と環境大臣との懇談で、団体側の発言中、環境省の職員がマイクの音を切ったという問題が起きたことを考えると、未来に生きる人たちから、「なぜ正しいことをしなかったのだろう」と言われる可能性はないでしょうか。
人間の世界がある限り、終わることがない問いかけが水俣病からは発せられています。
2024年09月01日