2023年11月01日

11月の読書のテーマは?

今月の読書のテーマは「縁起のいい樹木について調べよう」です。 

人間は、大昔から衣・食・住の全てを、植物に頼ってきました。食料として、あるいは衣服・材木に姿を変え、生命や生活を支えてくれる植物を、昔の人は大いに尊んだに違いありません。そうして神聖視したり、縁起がいいとみなしたりした樹木や植物はたくさんあります。縁起の由来は書物に譲りますが、昔の人がどんな気持ちでそれらの樹木を活用していたかを考えてみました。 

科学が発達した現代でも、私たちはいろいろな縁起をかつぎながら暮らしています。自分のことはもちろん、大切な人たちの健康や幸せ、安全を祈る人は多いでしょう。例えば、親しい人が新しい家を建てたら、縁起に配慮した新築祝いを贈ります。その家で、ご家族みんなが幸せに暮らしてゆけますようにと。また世界情勢を考えると、平和を祈らずにはいられないでしょう。 

そうした場合、現代であれば便利な家電製品や防犯グッズ、珍しくて美しいもの・美味しいものを取り寄せて贈ることもできます。でも1000年前にそういった贈り物をするのは難しいですね。 

もしも私がその時代に生きていたら、新築祝いは「椿の苗」にするかもしれません。真冬でもつややかな緑色の葉を茂らせる椿の姿は、生命力の強さを感じさせます。そして椿は、魔を寄せ付けない強力な結界樹(防壁・バリア)でもあるそうです。その上、美しい花で目を楽しませてくれます。苗が手に入らないなら、せめて椿のひと枝を、ささやかな贈り物に添えたくなるでしょうか。あるいは、南天の枝にするかもしれません。 

幸せを願う気持ちは100年、1000年前でも同じです。昔の人が、樹木にどんな祈りや願いを託して大切にし、活用してきたかを調べてみませんか? 

 

(参考文献:『日本人は植物をどう利用してきたか』中西弘樹著 岩波書店 2012, 『お祓い日和』加門七海著 KADOKAWA 2009)